空間情報科学実験の紹介


数ある空間情報科学関連のカリキュラムの中でも特筆されるのが空間情報科学実験です.この科目では,履修者各自がフィールドで自らデータを作成することが大きな特徴となっています.履修者はフィールドから持ち帰った生データをデータベース化し,そのデータをGISによって空間分析するのです.

空間情報科学実験2003〜2004

東京都心部における空間利用の分析が課題とされ,履修者は都心空間に各自で設定した範囲を対象にして,既存の白地図をもとに,オフィスや商店等の空間利用を土地区画ごとに調査しました.
(左図:空間情報科学実験で作成された東京都心部の空間利用図の一部)

 ここで重視されるのは,データ取得・デジタルデータ化・分析を一貫して自ら作業するという一連のプロセスです.この一連のプロセスによって,履修者は地域を自分の目で見て,そこに課題を発見する能力を養うことができるでしょう.地理学の分野においてGIS教育を行う意義は,決してGIS操作技術のみを修得するだけではなく,課題発見・データ取得・そして分析の力を統合的に身につけることであるとスタッフは考えているのです.

◆〜参加者からの声〜
【声その1】
 大学院までGISを触ったことのなかった(お恥ずかしい限りですが…)私が本格的にGISと向き合うきっかけとなったのが、この空間情報科学実験です。簡単な作業内容をご紹介しますと、まず土地利用図をデジタルデータ化し、それをベクター型データへ変換、Arc/Viewでトレースし、そこに属性データを書き入れてGISで土地利用表示を試みる実験です(初めは何がなんだかよく分かりませんでした)。

 まず、この実験で明らかになったことは、GISで地図を描く時の考え方が理解できました。人間が無意識に行っている思考方法をコンピュータに認識させていく必要があり、例えば頭の中ではビルとその属性は一致していますが、コンピュータの中では描いたビルに意味を与えていく作業を行わなければなりませんでした。これまで手書きに慣れた私にとってこの作業は面倒でしたが、ベースマップさえ作成してしまえば、属性を変えて多様に表示させることができるので、手書きにかかる時間と手間が大幅に短縮され容易に視覚化できることは大きなメリットだと感じました。
加えて、地図化に当たってどのような主題図を作るかを絶えず考えながら調査を行うことが必要であると感じました。手書きに比べ手軽に地図を描くことができるので、趣旨を明確にしないと単なる地図表示ツールで終わってしまう危険性があると感じました。今回は昭和通りに面する土地利用を、八重洲通りとの交差点から江戸橋を通り国道4号との交差点にかけて調査しましたが、線的な拡がりの中でどのような業種が張り付いているのかを知りたかったので細かい業種設定を行って調査しました。

 この実験を通して感じたことは、様々な主題図を表示させることができる反面、これまで以上に明らかにすべき内容を吟味していく重要性を学びました。地理学でGISが果たすべき役割は大きいと思いますが、それを使う私たちが何を明らかにしていくのかという基本姿勢は普遍のものなんだと再認識致しました。

【声その2】
 今までGISを利用した経験はありましたが、今回のように「自ら足で稼いだデータ」をGISのデータとして入力を行ったのははじめてでした。実験によって、その一連の手法を身につけることができただけでなく、GISで分析をする際に投入する「データ」についてもっと注意深く検討をすることが大事だということを強く感じました。



【空間情報科学実験2009】
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