T はじめに
1993年にNCSAのMosaic が登場し,インターネット上でWWWの利用が可能になると,イギリスのエジンバラ大学地理学部(Arc/INFOのインターフェース)や Geomatics Canada (ナショナルアトラス)などで地理情報を対話的に検索・表示するGISの提供が始まった(村山・尾野,1996a:村山・尾野,1996b:貞広,1996).これ以降,より機能を向上した Netscape やインターネット・エクスプロラーなどが次々と誕生し,これらのブラウザーが対話型システムの構築を容易にするJava言語やActiveXを搭載するようになると,インターネットでGISを実現する「インターネットGIS」の実用化が進んだ1)(第1図).
ロンドン大学地理学部は,インターネットGISの研究を推進し,高い評価を得ている研究機関の一つである.イギリスの歴史統計を分析・処理するThe Great Britain Historical GIS Programmeを立ち上げ,次の三つのプロジェクトを稼動させている.
(http://www.geog.qmw.ac.uk/gbhgis/index.html).
3)Lifeline Project
1)では,イギリスにおいて近代的な統計データの収集が開始された1830年代後半からデジタル形式でデータが入手できるようになった1970年代までの期間を対象とし,この間に変更のあった主要行政界と主要統計(社会経済統計・選挙統計)をGISでリンクさせた地図作成・分析ツールを提供している. 行政界とデータを年次間で一致させ,時系列分析を可能にさせる手だてが施されている.
2)では,歴史統計と行政界を結びつけたアニメーションや3次元図を含む主題アトラスを提供している.
3)は個人やグループのライフコースの空間的経路を可視化するプロジェクトである.行動・移動記録を地図上に表現する技法の開発が進められている.
本研究は,これらのプロジェクトの成果などを参考にしながら,空間データや属性データをインターネット上で結合させて,空間情報を一般ユーザに提供するシステムを構築することを目指している.