U インターネットGISのしくみ

 インターネットGISを構築するには,処理をクライアント側に担当させるか,あるいはサーバー側に担当させるかによって,次の三つの方法が考えられる.

1)処理をサーバー側中心で行うもの(第2−1図).

2)処理をクライアント側中心で行うもの(第2−2図).

3)処理をそれぞれの能力に応じてクライアント側とサーバー側で合理的に分担させるもの(第2−3図).

 1)においては,Perlなどを使ったCGI−BIN,GISソフトウェア,データベースソフトウェア,C言語などで作成されたアプリケーション,画像形式変換ソフトウェアなどのサーバー上で動作するソフトを用いて,クライアントの要求をこなし,その結果を画像やテキストに加工処理してクライアント側に向けて送信する.この方法は,クライアントとサーバー間の交信が頻繁となり,リクエスト結果を得るための待ち時間が長くなるという欠点がある.前述したエジンバラ大学の初期システムで用いられた.

 2)は,Java言語やActiveXの活用により可能になった方法である.それ以前のHTMLでは,ボタンや項目はクライアント側で準備できるが,処理は1)に示したように,サーバー側に頼らざるを得なかった.JavaはC言語やC++の流れを汲むオブジェクト指向プログラム言語であり,ネットワークを通じたファイル操作機能や高度なグラフィック機能を有している.とくに,Javaのグラフィック機能は,基本図形の描画だけでなく,ポイントインポリゴン,矩形のオーバーラップ判定,リスト構造など,GISに必須な基本機能を含んでいるため,これらの機能を利用すればGISプログラムの作成が容易になる.

 クライアント側では,Java言語のプログラム(アプレット)をサーバーから転送して起動し,ファイルの読み込みや地図表示など主要な処理を行う.サーバー側はアプレットやデータの転送だけを行うため,負担の軽減が図れる.しかし,データ量が膨大になると,転送の待ち時間がネックになってくる.

 3)では,サーバー側にデータベースサーバーまたはGISソフトと通信用モデュールをおく.クライアントがサーバーに接続すると,通信用モデュール付きのプログラムがクライアントに転送される.このモデュールとサーバーの通信用モデュール間でWWWサーバーを通さずに直接データが送れるので,必要なデータを効率的にしかも高速にクライアント側へ転送可能になる.最近ではデータを取り扱うプログラムやデータと一体化したオブジェクトも転送できるようになった.このような技術は分散オブジェクトテクノロジーと呼ばれる.オブジェクトの通信が可能になれば,データの更新とともにソフトウェアの更新もおこなえる.この方法を実現するソフトウェアには,CORBAやDCOMがある.第3図はCORBAの例で,通信モデュール“ORB”を使ってオブジェクトのやりとりを行う.コンピュータネットワーク上で地理情報の処理に関する標準的な手続きの構築を目指すOpenGISコンソーシアム(Buehler and McKee, 1997) は,この手法の標準化案を提示している2)

 本研究では,プログラム(アプレット)やデータをサーバーにおき,これらをクライアント側に転送して実際の処理を行うシステムを構築する.したがって,本システムは上の三つのうち2番目の方法を採用する(第3図).地図は起動時に一括転送するが,属性は,ユーザーが選択すると年次別・項目別に随時転送されるようにし,転送にともなう待ち時間をできるだけ押さえる工夫を施す.

 本システムは,純粋のJava(Symantec Visual Cafe Pro)アプリケーションであるが,Javaを用いたのは以下の四つの理由による.

1)ネットスケープやインターネットエクスプローラーだけで利用できる.

2)プログラムは,機能ごとに分割可能であり,使用時にクライアント側に転送され実行されるので,転送速度の遅いインターネットに適している.

3)グラフィック・データベースアクセスなどの便利な機能が備わっているので, GISを構築し易い.

4)最新の技術がJavaで利用できるので,拡張性や将来性がある.

 本システムが対応するブラウザーはネットスケープ3.0以上,インターネット・エクスプローラー3.0以上である.クライアント側のハードウェアはWindows95の場合,メモリー16メガバイト以上を最低必要とするが,32メガバイト以上を推奨する.


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