Y おわりに
本システムの汎用性をより高めるには,今後次のような改良が必要となろう.
第一に,地図表示をより迅速にするため,転送時間を短縮する手だてを講じる.地図データ,特にベクトル型データは圧縮技術を使うだけではなく,総描によって,図形の特徴を保存しつつデータ量を削減する. サーバー側にこの機能を実装すれば,効率的に地図データを転送できる.
第二に,カルトグラム,プリズムマップなども提供できるようにし,ビジュアライゼーションの高度化を図る. Javaの次のバージョンでは,ポストスクリプトで実現可能な機能をほぼすべて実現できるモジュール や3次元表示が提供されるので,地図表現をより充実することができるだろう.
第三に,CORBA(Common Object Request Broker Architechture)などの普及により,現在オブジェクト通信の標準化が進められているが,本システムでもこれに積極的に対応していく必要がある.オブジェクト指向を取り入れたGISデータの国際標準化も進んでいる(碓井,1995:明野・熊木,1997).
本システムには, OpenGISの simple featuresの仕様(OpenGIS Consortium Inc., 1997)が参考になろう.
謝辞
本研究は,茨城大学教育学部の小野寺淳先生と実施した共同研究「明治・大正期人口統計地図情報」(科研費・研究成果促進費データベース)が出発点となっており,このプロジェクトで作成したデータベースを今回利用いたしました.小野寺先生には,「共武政表」,「徴発物件一覧表」の史料としての制約・限界,明治期の行政界の変遷などに関して多くのご教示を賜りました.厚く感謝申し上げます.データベースの作成の際には,筑波大学歴史・人類学系歴史地理学研究室所蔵の「共武政表」と「徴発物件一覧表」を借用させていただきました.同研究室の石井英也先生および小口千明先生に御礼申し上げます.
なお,本研究を遂行するにあたっては,科研費・重点領域研究「統計情報活用のフロンティアの拡大--ミクロデータによる社会構造解析--」(領域代表:松田芳郎一橋大学経済研究所教授)および多目的データバンクプロジェクト(筑波大学社会工学系)の研究経費の一部を使用しました.
1)現在, ESRI,MapInfo,Intergraph,Autodeskなど主要なGIS企業がインターネットGISソフトウェアを販売している.しかし,これらはすべて100万円以上と高価であり,しかも使用できるコンピュータやデータの形式が限定される場合が多い.
2)これら以外に, ESRI社のArcExprolerのようにブラウザーを通さずにGISアプリケーションから,直接インターネット経由でデータにアクセスする方法もある. ArcExprolerはESRI社のホームページ(http://www.esri.com)から無料で入手できる.しかし現在のところ日本語表示はできない.
3)地図表示の単位は市郡とし,その境界域は昭和初期の状況に一致させた. 昭和初期の市郡界図は小野寺淳氏(茨城大学)から借用した.
明野和彦・熊木洋太(1997):空間データの標準化と整備の動向,情報処理,38-3,232-238.
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